<Header>
<Author: 白居易>
<Title: 代書詩一百韻寄微之>
<Format: 格式不明>
<Year: 1964>
<BookName: 漢詩大系  白樂天>
<Translator: 田中克己>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 書に代ふる詩一百韻、微之に寄す>
<BookPage: 142-159>
<UsedPage: 18>
<Feature: 1, 4>
<End Header>
<Poem>
憶在貞元歲，
初登典校司。
身名同日授，
心事一言知。
肺腑都無隔，
形骸兩不羈。
疎狂屬年少，
閑散爲官卑。
分定金蘭契，
言通藥石規。
交賢方汲汲，
友直每偲偲。
有月多同賞，
無杯不共持。
秋風拂琴匣，
夜雪卷書帷。
高上慈恩塔，
幽尋皇子陂。
唐昌玉蘂會，
崇敬牡丹期。
笑勸迂辛酒，
閑吟短李詩。
儒風愛敦質，
佛理賞玄師。
度日曾無悶，
通宵靡不爲。
雙聲聯律句，
八面對宮棊。
往往遊三省，
騰騰出九逵。
寒銷直城路，
春到曲江池。
樹暖枝條弱，
山晴彩翠奇。
峰攢石綠點，
柳宛麴塵絲。
岸草煙鋪地，
園花雪壓枝。
早光紅照耀，
新溜碧逶迤。
幄幕侵堤布，
盤筵占地施。
徵伶皆絕藝，
選伎悉名姬。
粉黛凝春態，
金鈿耀水嬉。
風流誇墮髻，
時世鬬啼眉。
密坐隨歡促，
華尊逐勝移。
香飄歌袂動，
翠落舞釵遺。
籌插紅螺椀，
觥飛白玉巵。
打嫌調笑易，
飲訝卷波遲。
殘席諠譁散，
歸鞍酩酊騎。
酡顏烏帽側，
醉袖玉鞭垂。
紫陌傳鐘鼓，
紅塵塞路岐。
幾時曾蹔別，
何處不相隨？茌苒星霜換，
迴環節候催。
兩衙多請告，
三考欲成資。
運啓千年聖，
天成萬物宜。
皆當少壯日，
同惜盛明時。
光景嗟虛擲，
雲霄竊暗窺。
攻文朝矻矻，
講學夜孜孜。
策目穿如札，
鋒毫銳若錐。
繁張獲鳥網，
堅守釣魚坻。
竝受夔龍薦，
齊陳鼂董詞。
萬言經濟略，
三策太平基。
中第爭無敵，
專場戰不疲。
輔車排勝陣，
掎角搴降旗。
雙闕紛容衛，
千僚儼等衰。
恩隨紫泥降，
名向白麻披。
既在高科選，
還從好爵縻。
東垣君諫諍，
西邑我驅馳。
再喜登烏府，
多慙侍赤墀。
官班分內外，
遊處遂參差。
每列鵷鸞序，
偏瞻獬豸姿。
簡威霜凜冽，
衣彩繡葳蕤。
正色摧強禦，
剛腸嫉喔咿。
常憎持祿位，
不擬保妻兒。
養勇期除惡，
輸忠在滅私。
下韝驚燕雀，
當道懾狐貍。
南國人無怨，
東臺吏不欺。
理冤多定國，
切諫甚辛毗。
造次行於是，
平生志在茲。
道將心共直，
言與行兼危。
水暗波飜覆，
山藏路險巇。
未爲明主識，
已被倖臣疑。
木秀遭風折，
蘭芳遇霰萎。
千鈞勢易壓，
一柱力難搘。
騰口因成痏，
吹毛遂得疵。
憂來吟貝錦，
謫去詠江蘺。
邂逅塵中遇，
殷勤馬上辭。
賈生離魏闕，
王粲向荆夷。
水過清源寺，
山經綺季祠。
心搖漢臯珮，
淚墮峴亭碑。
驛路緣雲際，
城樓枕水湄。
思鄉多繞澤，
望闕獨登陴。
林晚青蕭索，
江平綠渺瀰。
野秋鳴蟋蟀，
沙冷聚鸕鷀。
官舍黃茅屋，
人家苦竹籬。
白醪充夜酌，
紅粟備晨炊。
寡鶴摧風翮，
鰥魚失水鬐。
闇雛啼渴旦，
涼葉墜相思。
一點寒燈滅，
三聲曉角吹。
藍衫經雨故，
驄馬臥霜羸。
念涸誰濡沫，
嫌醒自歠醨。
耳垂無伯樂，
舌在有張儀。
負氣衝星劒，
傾心向日葵。
金言自銷鑠，
玉性肯磷緇。
伸屈須看蠖，
窮通莫問龜。
定知身是患，
應用道爲醫。
想子今如彼，
嗟予獨在斯。
無憀當歲杪，
有夢到天涯。
坐阻連襟帶，
行乖接履綦。
潤銷衣上霧，
香散室中芝。
念遠緣遷貶，
驚時爲別離。
素書三往復，
明月七盈虧。
舊里非難到，
餘歡不可追。
樹依興善老，
草傍靜安衰。
前事思如昨，
中懷寫向誰。
北村尋古柏，
南宅訪辛夷。
此日空搔首，
何人共解頤。
病多知夜永，
年長覺秋悲。
不飲長如醉，
加餐亦似飢。
狂吟一千字，
因使寄微之。
<End Poem>
<Translation>
思えば貞元年間に、きみとぼくとは秘書省校書郎という役に任じられた。任命状と世間の評判とを同じ日に授けられ、その時かわした一言で気持ちもわかった。心には隔てが一つもなく、おたがいに身も心も遠慮がいらなかった。ふたりとも若いので軽率できちがいじみ、役目が低いのでひまだった。仕事の上でも堅い友情を約束し、おたがいに戒めあおうといった。賢人たちと交際することを一心にし、まっすぐな人びとを友としてはげましあった。 名月の時はともに見、酒宴の席でもいつもいっしょにいた。秋風には音楽をきき、雪の夜には書斎にいっしょにいた。高い慈恩寺の塔にのぼってゆき、皇子坡にもあそびに行った。唐昌觀の玉蕊花をともにめで、崇敬寺の牡丹もふたりで見物した。笑いながら辛立度に酒をすすめ、しずかに率織の詩を吟じた。儒者の風格の高い劉敦質を愛し、仏教の理論ではに感心した。されば永いあいだ煩悶もなく、徹夜で何もかもやった。詩を作っては雙声を用い、囲碁もずいぶんやった。中書・尚書・門下の三省にも時々ゆき、都大路を元気よく馬で出て行った。まっすぐな大路にはやっと寒気が去り、春が曲江池に来たばかりだった。暖気で枝には若芽が出はじめ、山は晴れて緑にうつくしかった。峯には緑青の点がいっぱい打たれ、柳はモエギいろの糸をかけていた。岸べの草は煙のように地に敷き、園の花は雪かとばかり枝をおさえていた。朝日はあかあかと、春のはじめの水たまりは青くななめにつづいていた。堤いっぱいに幕を張り、広い場所をとって宴会場をもうけた。呼んだ芸人はみな名人、選んだ歌姫も有名なものばかり。その化粧は春にふさわしく、金のカンザシは池辺のおどりのとき水に映じた。流行の墮馬髻をした妓たちは、はやりの啼眉粧をしていた。おもしろくなるとだんだん坐が近づき、よい景色へと酒樽も移って行った。歌い舞う妓の機がら香がかおって来、舞い手のヒスイのカンザシが池に落ちた。酒令のカズトリ札は赤い貝製の碗にさしこまれ、白玉製の罰杯がとんだ。調笑令をやらされていやがるもの、卷波曲で飲まされるもの。やがて宴がすみさわぎもおさまり、家路へ酔って馬で帰った。酔うて赤い顔の上には黒い帽が落ちそうにのり、袖からは玉の鞭が垂れ下っていた。都大路に深夜の鐘が鳴り、辻には砂塵がまっていた。別れてもほんの時のまで、どこへもおともして行った。 月日はどんどんすすみ、春夏秋冬と季節もうつりかわった。両人ともに朝晩の勤めはよく休暇をねがい、三年目の試験の準備をした。 運よく千年に一人の聖帝がお立ちになり、天も万物をめぐまれた。われらはすべて若いものだから、この盛明の時を大切だと考えた。時間をむだづかいしないようにと、宮中に仕えたいと思った。 朝から一心に文章をつくり、夜も熱心に勉強した。微之君と策略の題目をこまかく集め、筆先の鋭さは錐のようだった。天子は鳥網を何度も張り、魚をにがすまいと洲を動かれなかった。おかげで二人とも試験官の推薦を受け、晁錯・董仲舒のごとく上疏ができた。万言をもって経世済民の計をのべ、三章の上策文で太平の基を述べた。 くらべるもののない成績で及第し、試験場を独占するという風で疲れもしなかった。机をならべて及第し、いっしょに敵の降参の旗をつかまえたようだった。さて宮中に上ると護衛のきびしい中で、おごそかに百官が及第にたちあってくれた。詔書が下って君恩をたまわり、この詔書で名誉があたえられた。高等で及第したというもので、ついでよき官爵も与えられた。きみは拾遺という諫官となり、ぼくは西の監屋県の役人となってかけまわる。ついできみは御史台に栄転し、ぼくはかたじけなくも君側に侍することとなった。内官と外官では班がことなり、あそびさえもわかれわかれとなった。朝官の列にならぶとき、いつも御史の冠をしたきみをはるかに見た。弾劾文は霜のごとくきびしく、制服の繡もみごとだった。顔色を正して強情なやつをやっつけ、強気でお世辞をにくむのだった。いつも禄や位などをばかにして、妻子を安全になどとは思ってない。勇気を養うのも悪を除くため、忠をあらわすは私心をなくするにありとしていた。鷹を放って燕雀のごとき小人をこわがらせ、道に当たって狐狸どもを恐れさせた。かくて南国に使者となり無実の怨みをなくし、東都の御史台では吏を欺かさらしめた。無実をはらすこと予定国にまさり、切諫は辛毗より多かった。ちょっとのことでも道にもとづいてやり、ふだんの志すところ道にありだった。そのゆく道たるや心とともに直く、言行ともに高かった。水は暗ければ波だつこと多く、山は深くなると路がけわしい。いまだ明主に識られぬうちに、寵臣どもに疑われた。木は高ければ風に吹き折られ、蘭はかんばしいが霰にあってしぼむ。千鈞の重みはものをおさえ易いが、一本の柱でこれをささえることはむつかしい。ものいえば唇さむし、毛を吹いて疵を求めた。かくて憂えて貝錦を詠じ、流されて江蘺を詠ずることとなった。ぼくははからずも路ばたであい、馬上ねんごろに別れをつげた。 賈誼が朝廷から離れ、王粲が荊州に向からときにそっくりだった。 おうさん 水路では清源の寺を過ぎ、山道では綺里季の祠をとおったろう。漢阜山では二女の贈るに心を動かし、幌事の碑を見ては落涙したろう。うまや路は雲の中を通り、また城楼は水ぎわに臨んでいた。故郷を思いたしては沢をめぐり、都のかたをながめようとひとり城壁に登ったろう。 林は日ぐれ青くさびしく、大川は平らかでどこまでも青々としている。平野には秋が来てコオロギが鳴き、冷たい砂に鵜が群れている。さてきみの官舎はカヤブキ小屋で、民家はマダケの垣根である。 夜くむ酒はにごり酒、朝の飯には古米だ。がいを失った鶴が翼をいため、やもめの魚がひれをなくしたよう。も見えぬひなはあさがた乳ほしとなくし、秋になって相思樹は片葉をおとした。ただ一つのこったうすら寒い燈も消え、三声、夜あけをつげる角ぶえが鳴る。色の官服は雨にうたれて古くなり、あさぎいろの馬も霜で病んでいる。くらのどがかわいても泡ではだめだが、醒めるのがいやで薄い酒をすする。馬も伯楽がいないので耳垂れているが、舌があれば張儀と同じくくじけない。気なことは星を刺す剣、君を思う心は日に向かうアォイそっくりだと。かし黄金のようなことばもいつか消え、珠のような天才もさびがつく。 みよ、のびちぢむシャクトリムシを見習え、うらないなどに吉凶を見てもらうな。 間の身が患ぞのものなので、道を用いることが医者にかかるかわりだ。 いもえばいまきみはそこにおり、ぼくひとりこの都にいる。 てしてうれえながら歳末に当たり、ゆめに天のはてのそこへゆく。 遠くはなれていてならんで坐れず、行く先もちがっておともをしてゆけない。 衣の霧のうるおいが消え、室の中の香草の香が消えたようにはるかな思い出。 遠くのきみを思うと流されたのが気の毒で、時節の移りでは別れているのが悲しい。 この間に三度の手紙の往来があり、月は十回みちたりかけたりした。思い出の場所はぼくはすぐゆけるが、あのたのしみはもう得られない。興善寺のよこの木は古り、靖安坊の草は枯れたよ。むかしのことを思えば昨日のようだが、心中のことを誰に書いてやろう。今日も北村に古木の柏をたずね、きみの旧宅の=ブシの木をも見た。その今日も首を掻いてよびよせられず、ともにえみかわす人もない。このごろよく病気になるので夜長がわかり、年よったので秋が悲しく感じられる。飲まないのにいつも酔っているようで、むりに食べても空腹のような気がするよ。へたな歌千字をかいて、微之君にとどけさす。
<End Translation>
<Formatted Translation>
思えば貞元年間に、きみとぼくとは秘書省校書郎という役に任じられた。
任命状と世間の評判とを同じ日に授けられ、その時かわした一言で気持ちもわかった。
心には隔てが一つもなく、おたがいに身も心も遠慮がいらなかった。
ふたりとも若いので軽率できちがいじみ、役目が低いのでひまだった。
仕事の上でも堅い友情を約束し、おたがいに戒めあおうといった。
賢人たちと交際することを一心にし、まっすぐな人びとを友としてはげましあった。 
名月の時はともに見、酒宴の席でもいつもいっしょにいた。
秋風には音楽をきき、雪の夜には書斎にいっしょにいた。
高い慈恩寺の塔にのぼってゆき、皇子坡にもあそびに行った。
唐昌觀の玉蕊花をともにめで、崇敬寺の牡丹もふたりで見物した。
笑いながら辛立度に酒をすすめ、しずかに率織の詩を吟じた。
儒者の風格の高い劉敦質を愛し、仏教の理論ではに感心した。
されば永いあいだ煩悶もなく、徹夜で何もかもやった。
詩を作っては雙声を用い、囲碁もずいぶんやった。
中書・尚書・門下の三省にも時々ゆき、都大路を元気よく馬で出て行った。
まっすぐな大路にはやっと寒気が去り、春が曲江池に来たばかりだった。
暖気で枝には若芽が出はじめ、山は晴れて緑にうつくしかった。
峯には緑青の点がいっぱい打たれ、柳はモエギいろの糸をかけていた。
岸べの草は煙のように地に敷き、園の花は雪かとばかり枝をおさえていた。
朝日はあかあかと、春のはじめの水たまりは青くななめにつづいていた。
堤いっぱいに幕を張り、広い場所をとって宴会場をもうけた。
呼んだ芸人はみな名人、選んだ歌姫も有名なものばかり。
その化粧は春にふさわしく、金のカンザシは池辺のおどりのとき水に映じた。
流行の墮馬髻をした妓たちは、はやりの啼眉粧をしていた。
おもしろくなるとだんだん坐が近づき、よい景色へと酒樽も移って行った。
歌い舞う妓の機がら香がかおって来、舞い手のヒスイのカンザシが池に落ちた。
酒令のカズトリ札は赤い貝製の碗にさしこまれ、白玉製の罰杯がとんだ。
調笑令をやらされていやがるもの、卷波曲で飲まされるもの。
やがて宴がすみさわぎもおさまり、家路へ酔って馬で帰った。
酔うて赤い顔の上には黒い帽が落ちそうにのり、袖からは玉の鞭が垂れ下っていた。
都大路に深夜の鐘が鳴り、辻には砂塵がまっていた。
別れてもほんの時のまで、どこへもおともして行った。 
月日はどんどんすすみ、春夏秋冬と季節もうつりかわった。
両人ともに朝晩の勤めはよく休暇をねがい、三年目の試験の準備をした。 
運よく千年に一人の聖帝がお立ちになり、天も万物をめぐまれた。
われらはすべて若いものだから、この盛明の時を大切だと考えた。
時間をむだづかいしないようにと、宮中に仕えたいと思った。 
朝から一心に文章をつくり、夜も熱心に勉強した。
微之君と策略の題目をこまかく集め、筆先の鋭さは錐のようだった。
天子は鳥網を何度も張り、魚をにがすまいと洲を動かれなかった。
おかげで二人とも試験官の推薦を受け、晁錯・董仲舒のごとく上疏ができた。
万言をもって経世済民の計をのべ、三章の上策文で太平の基を述べた。 
くらべるもののない成績で及第し、試験場を独占するという風で疲れもしなかった。
机をならべて及第し、いっしょに敵の降参の旗をつかまえたようだった。
さて宮中に上ると護衛のきびしい中で、おごそかに百官が及第にたちあってくれた。
詔書が下って君恩をたまわり、この詔書で名誉があたえられた。
高等で及第したというもので、ついでよき官爵も与えられた。
きみは拾遺という諫官となり、ぼくは西の監屋県の役人となってかけまわる。
ついできみは御史台に栄転し、ぼくはかたじけなくも君側に侍することとなった。
内官と外官では班がことなり、あそびさえもわかれわかれとなった。
朝官の列にならぶとき、いつも御史の冠をしたきみをはるかに見た。
弾劾文は霜のごとくきびしく、制服の繡もみごとだった。
顔色を正して強情なやつをやっつけ、強気でお世辞をにくむのだった。
いつも禄や位などをばかにして、妻子を安全になどとは思ってない。
勇気を養うのも悪を除くため、忠をあらわすは私心をなくするにありとしていた。
鷹を放って燕雀のごとき小人をこわがらせ、道に当たって狐狸どもを恐れさせた。
かくて南国に使者となり無実の怨みをなくし、東都の御史台では吏を欺かさらしめた。
無実をはらすこと予定国にまさり、切諫は辛毗より多かった。
ちょっとのことでも道にもとづいてやり、ふだんの志すところ道にありだった。
そのゆく道たるや心とともに直く、言行ともに高かった。
水は暗ければ波だつこと多く、山は深くなると路がけわしい。
いまだ明主に識られぬうちに、寵臣どもに疑われた。
木は高ければ風に吹き折られ、蘭はかんばしいが霰にあってしぼむ。
千鈞の重みはものをおさえ易いが、一本の柱でこれをささえることはむつかしい。
ものいえば唇さむし、毛を吹いて疵を求めた。
かくて憂えて貝錦を詠じ、流されて江蘺を詠ずることとなった。
ぼくははからずも路ばたであい、馬上ねんごろに別れをつげた。 
賈誼が朝廷から離れ、王粲が荊州に向からときにそっくりだった。 おうさん 
水路では清源の寺を過ぎ、山道では綺里季の祠をとおったろう。
漢阜山では二女の贈るに心を動かし、幌事の碑を見ては落涙したろう。
うまや路は雲の中を通り、また城楼は水ぎわに臨んでいた。
故郷を思いたしては沢をめぐり、都のかたをながめようとひとり城壁に登ったろう。 
林は日ぐれ青くさびしく、大川は平らかでどこまでも青々としている。
平野には秋が来てコオロギが鳴き、冷たい砂に鵜が群れている。
さてきみの官舎はカヤブキ小屋で、民家はマダケの垣根である。 
夜くむ酒はにごり酒、朝の飯には古米だ。
がいを失った鶴が翼をいため、やもめの魚がひれをなくしたよう。
も見えぬひなはあさがた乳ほしとなくし、秋になって相思樹は片葉をおとした。
ただ一つのこったうすら寒い燈も消え、三声、夜あけをつげる角ぶえが鳴る。
色の官服は雨にうたれて古くなり、あさぎいろの馬も霜で病んでいる。
くらのどがかわいても泡ではだめだが、醒めるのがいやで薄い酒をすする。
馬も伯楽がいないので耳垂れているが、舌があれば張儀と同じくくじけない。
気なことは星を刺す剣、君を思う心は日に向かうアォイそっくりだと。
かし黄金のようなことばもいつか消え、珠のような天才もさびがつく。 
みよ、のびちぢむシャクトリムシを見習え、うらないなどに吉凶を見てもらうな。 
間の身が患ぞのものなので、道を用いることが医者にかかるかわりだ。 
もえばいまきみはそこにおり、ぼくひとりこの都にいる。
してうれえながら歳末に当たり、ゆめに天のはてのそこへゆく。 
遠くはなれていてならんで坐れず、行く先もちがっておともをしてゆけない。 
衣の霧のうるおいが消え、室の中の香草の香が消えたようにはるかな思い出。 
遠くのきみを思うと流されたのが気の毒で、時節の移りでは別れているのが悲しい。 
この間に三度の手紙の往来があり、月は十回みちたりかけたりした。
思い出の場所はぼくはすぐゆけるが、あのたのしみはもう得られない。
興善寺のよこの木は古り、靖安坊の草は枯れたよ。
むかしのことを思えば昨日のようだが、心中のことを誰に書いてやろう。
今日も北村に古木の柏をたずね、きみの旧宅の=ブシの木をも見た。
その今日も首を掻いてよびよせられず、ともにえみかわす人もない。
このごろよく病気になるので夜長がわかり、年よったので秋が悲しく感じられる。
飲まないのにいつも酔っているようで、むりに食べても空腹のような気がするよ。
へたな歌千字をかいて、微之君にとどけさす。
<End Formatted Translation>